仮想通貨詐欺の相談では、必ずと言っていいほど「TxID(取引ID)はありますか?」と尋ねられます。TxIDは、ブロックチェーン上の取引を一つひとつ識別する“追跡の出発点”だからです。
この記事では、TxIDとは何かを、ETH(イーサリアム)・BTC(ビットコイン)・USDT(テザー)の仕組みとあわせて、専門用語をかみくだいて解説します。仕組みを知っておくと、被害に遭ったときに何が追えて、何が追いにくいのかを冷静に判断しやすくなります。
TxID(トランザクションID)とは
TxID(Transaction ID)は、ブロックチェーンに記録された1件の取引(送金)に付けられる固有の番号です。「トランザクションハッシュ(Tx Hash)」とも呼ばれます。英数字が並んだ長い文字列で、たとえば次のような形をしています。
例(ダミー):
0x3a1f...c9d2(イーサリアム系)/a7f3...b0e1(ビットコイン系)
このTxIDをブロックチェーンのエクスプローラー(取引を誰でも閲覧できる検索サイト)に入力すると、
- いつ
- どのアドレスから、どのアドレスへ
- どの通貨が、いくら
送られたかを確認できます。送金そのものは公開記録として残るため、TxIDがあれば資金の流れをたどる手がかりになるのです。
ブロックチェーンは「公開された取引台帳」
ETH・BTC・USDTなどの取引は、ブロックチェーンという公開の台帳に記録されます。ポイントは2つです。
- 取引は公開・記録される:誰から誰へいくら送られたかは、世界中の誰でも閲覧できます。これが追跡を可能にする土台です。
- アドレスは匿名:ただし、アドレスは数字と英字の羅列で、それだけでは持ち主の名前は分かりません。「お金の流れは見えるが、人は直接は見えない」のが基本です。
詐欺の調査とは、この公開記録をたどり、資金がどの取引所などに着金したかを突き止め、そこから先(本人特定や凍結の可能性)を関係機関につなぐ作業だと考えると分かりやすいです。
ETH・BTC・USDTの仕組みの違い
BTC(ビットコイン)
最初に作られた仮想通貨。取引は「UTXO」という、お釣りのように残高を受け渡す方式で記録されます。エクスプローラーは mempool.space や blockchain.com などが代表的です。
ETH(イーサリアム)
口座(アカウント)残高を増減させる方式で、TxIDは「0x」から始まります。代表的なエクスプローラーは Etherscan(イーサスキャン)。多くのトークンがこのイーサリアム上で発行されています。
USDT(テザー)— ここが詐欺で要注意
USDTは米ドルに価値を連動させたステーブルコインで、詐欺の送金に最も多く使われる通貨のひとつです。重要なのは、USDTが複数のブロックチェーン上で発行されている点です。
- ERC-20(イーサリアム上のUSDT)→ 確認は Etherscan
- TRC-20(トロン上のUSDT)→ 確認は Tronscan(トロンスキャン)
同じ「USDT」でもネットワークが違えば見るエクスプローラーも違います。詐欺ではTRC-20(トロン)が使われることも多いため、被害に遭ったときは「USDTをどのネットワークで送ったか」を確認しておくことが大切です。
なぜ詐欺の調査でTxIDが重要なのか
- 追跡の起点になる:TxIDがあれば、資金がそこからどのアドレスへ、最終的にどの取引所へ動いたかを追える可能性があります。
- 証拠として整理できる:いつ・いくら・どこへ送ったかを客観的に示せるため、警察や弁護士への相談時の材料になります。
- 着金先の特定につながることがある:資金が国内外の取引所に着金していれば、そこが手がかりになります(ただし、海外取引所が照会に応じない場合もあります)。
逆に言えば、TxIDがないと追跡の出発点を欠くことになります。被害に気づいたら、まずTxIDを確保してください。
TxIDがあっても「必ず取り戻せる」わけではない
正直にお伝えします。資金の流れが追えても、
- 相手がミキサー(資金を混ぜて追跡を妨げる仕組み)を使っている
- 着金先が協力に応じない海外取引所である
- すでに現金化されている
といった場合、回収は容易ではありません。TxIDは強力な手がかりですが、追跡=回収を保証するものではない点はご理解ください。それでも「何が起きたかを正確に把握し、次の相談につなげる」価値は十分にあります。
まとめ
- TxID(取引ID)は、ブロックチェーン上の1件の送金を識別する固有番号で、追跡の出発点。
- ETH・BTC・USDTは記録方式やエクスプローラーが異なる。USDTはERC-20/TRC-20でネットワークが違う点に注意。
- TxIDがあれば資金の流れを追える可能性があるが、回収を保証するものではない。
- 被害に気づいたら、まずTxIDとネットワークの種類を確保する。
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