ゲーム配信プラットフォーム「Steam」を悪用し、マルウェア(不正プログラム)を仕込んだゲームをダウンロードさせることで約80の仮想通貨ウォレットに不正アクセスし、少なくとも22万ドル(約3570万円)相当の仮想通貨を盗んだとして、米国の男性がFBIに逮捕されたとみられる。被害は2024年5月から2025年2月にかけて発生したとされており、ゲームプレイヤーを狙った仮想通貨窃取の手口として国内外で注目を集めている。
何が起きたのか
米メディア「Local 10 News」が確認したとされる告訴状によれば、逮捕されたZyaire Dontaevious Zamarion Wilkins氏は、Steamを通じてマルウェアが埋め込まれたゲームをユーザーにダウンロードさせた疑いをもたれている。ゲームをインストールしたユーザーのデバイスが感染し、そのデバイス上に保存された仮想通貨ウォレットの秘密鍵や認証情報が抜き取られた可能性があるとみられる。その結果、約80のウォレットが不正アクセスを受け、仮想通貨が外部に流出したとされている。
Steamは世界的に利用者数の多いゲームプラットフォームであり、ゲームのアップデートや新作インストールは日常的に行われる。こうした「信頼されやすい操作」に便乗して悪意あるプログラムを忍び込ませる手口は、セキュリティ上の盲点を突くものといえる。
手口の特徴と仮想通貨被害の構造
今回の事案で注目すべき点は、SNSやロマンス詐欺のような「人間関係の構築」を必要とせず、プラットフォームへの信頼そのものを悪用している点だ。被害者は「ゲームをインストール・更新しただけ」という認識でありながら、バックグラウンドでデバイスが侵害されていた可能性がある。
マルウェアによって仮想通貨ウォレットの秘密鍵(ウォレットへのアクセスに必要な暗号化された「鍵」)が盗まれると、ブロックチェーン上では本人が送金したのと区別がつかない形で資産が移動する。オンチェーン(ブロックチェーン上に記録された)データを追跡すれば送金の流れは確認できるものの、混合サービスや複数ウォレットへの分散送金が行われると、追跡は困難になることがある。今回は約80ものウォレットが対象になっており、資金散在の意図があった可能性も考えられる。
被害に遭わないための注意点
ゲームプラットフォームを経由したマルウェア感染を防ぐには、以下の点を意識することが重要とみられる。①ゲームのダウンロード・インストール後に不審な通信や動作がないか確認する習慣を持つ。②仮想通貨ウォレットはオンライン環境のデバイスと切り離した「ハードウェアウォレット」で管理することが望ましい。③ウォレットアプリやブラウザ拡張機能の権限設定を定期的に見直す。④万一、ウォレットの不審な送金を発見した場合は、TxID(トランザクションID=ブロックチェーン上の送金記録番号)を記録した上で、取引所や専門機関に速やかに相談することを検討したい。
まとめ
今回の事案は、Steamという信頼性の高いプラットフォームを悪用したマルウェア配布により、少なくとも約3570万円相当の仮想通貨が流出したとみられる事件だ。SNS・ロマンス詐欺とは異なり、人的接触なしに被害が及ぶ点が特徴的で、ゲームプレイヤーを含む幅広いユーザーが潜在的なリスクにさらされている可能性がある。仮想通貨をオフライン環境で管理することや、不審な動作への早期対応が、被害を最小化するうえで重要と考えられる。
参考: AUTOMATON
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